自由恋愛の最果ての地 パパ活は自由恋愛のユートピアか?
ここまで、交際クラブを利用している男女の生の声、そして交際クラブ代表者の声を交えながら、パパ活の世界の「ストリートビュー」を提示してきた。終章では、これまでに得られた知見を整理して、パパ活という社会現象から浮かび上がってくる私たち自身の課題、そして社会全体の課題について論じていきたい。パパ活の行われている交際クラブの世界は、言うなれば「自由恋愛の最果ての地」である。精神的に自立している(とされている)男女が、あらゆる制度や規範の縛りから自由になり、金銭のみを介して、いつでも・どこでも・誰でも・どのようにでも、自由に関係性を結ぶことができる。国境や国籍を越えた関係だけでなく、世間ではタブーとされている複数の相手との同時交際、既婚者とのとの交際(不倫)も、ここでは当たり前のように行われている。求められるルールは「一人の自立した人間として、相手に何ができるかを考えること」のみ。二人の関係性をどのようにデザインするかは、あくまで当事者次第だ。女性にとっては、経済的に不安定な生活から抜け出す手段にもなれば、家庭生活だけでは満たされない何かを充足するための手段にもなりうる。男性にとっては、パートナーとのセックスレスの苦しさを埋める手段にもなれば、疑似恋愛を楽しむ手段にもなりうる。性愛に対してリベラルな価値観を持つ男女からすれば、あらゆる制度や規範の縛りから解放されたこの世界は、ある種のユートピアのように思える。