隠花植物だって太陽を浴びたい

「東京のミッション系大学在学中に夕ぐれ族を立ち上げた22歳の女の子」という意外性に満ちた経歴を掲げた筒見氏は、一躍メディアの寵児になった。主婦向けのワイドショーをはじめ、「タモリ?楽部」「11ＰＭ」「トゥナイト」といった当時の人気深夜番組にも度々出演して、コメンテーターや芸能人らと愛人バンクの是非を巡って議論を交わした。「恋人への愛が２分の１だとすると、愛人へのそれは３分の１である」というのが筒見氏の持論だ。愛人の関係は、お互いに愛しすぎてもダメだし、愛されすぎてもダメ。相手を愛するのも３分の１、愛されるのも３分の１にしておいて、残りの３分の１は誰にも見せずにとっておくことが、愛人関係をうまくマネジメントするための秘訣だという。筒見氏は著作の中で、愛人の世界は「太陽の光が当たらないじめじめした場所で成長する隠花植物のようなもの」だと述べている。自身と夕ぐれ族が頻繁にメディアに取り上げられたことで、「今はもう、少なくとも隠花植物ではない。太陽が当たるところにでてきたんじゃないかしら」と自負している。銀座に事務所を構えた夕ぐれ族の会員数は５０００人に達し、入会金だけで５億円の売上に達したと報じられた。しかし「隠花植物」が太陽の光を浴びることができたのは、ほんの束の間だった。１９８３年12月、筒見氏は売春防止法違反で逮捕され、夕ぐれ族も解散。筒見氏の経歴や年齢も全て詐称だったことが明らかになり、愛人バンクのブームはあっけなく終わりを迎えることになる。