パパ活の歴史を振り返る

歴史を振り返ると、交際クラブはあくまで陽の当たらない存在であり、そこに関わる人たちの法的な立場はグレーであり続けてきた。交際クラブのような業種は、かつて「紹介売春」として捉えられていた。１９５８年（昭和33年）に売春防止法が施行された後、多くの「結婚相談所」が出現した。それらはいずれも「結婚相談」という建前で売春の仲介を行う事業所であり、警察からは「紹介売春の温床」として目をつけられていた。四半世紀後の１９８３年（昭和58年）、中年男性と若い女性の援助交際（愛人契約）を仲介する「愛人バンク夕ぐれ族」がメディアで話題になる。夕ぐれ族という名前は、中年男性と若い女性の愛人カップルを描いた吉行淳之介の小説『夕暮まで』に由来する。『愛人バンクとその時代』（伊藤裕作・人間社文庫）によれば、夕ぐれ族の入会金は男性が20万円、女性は０〜５万円程度。男性の平均年齢は40代半ばで、平均年収は約２０００万円。弁護士や医師、大学教員などの社会的地位の高い男性が多かった。女性は18歳〜22歳の学生やＯＬが中心。いずれもあくまで自己申告に基づく数字だが、会員の年齢や職業構成は現在のパパ活とほぼ変わりがない。同著の中では、愛人バンクは「トルコ風呂（現在のソープランド）にいるようなプロの女性ではなく、素人の若い女性と関係を持ちたい」という男性のニーズに応えて生まれた業種であることが描かれている。女性の素人性に対する高いニーズも、現在のパパ活と全く同様だ。愛人バンクに登録する女性側も、高卒後にタレントを目指して養成所に通っていたり、会社の給料だけでは満足のいく生活ができないことを悩んでいたりと、動機の面から見れば現在のパパ活女子とほとんど変わりがない。